ブスでわがままで、って、、、、

  • 2016.10.29 Saturday
  • 01:23

 

 

 

昨日の晴天は、まるでこの日を待っていたかのようで、嬉しかった。

 

 

一年に一度程度、その女性に会って話をする事が、もう数年続いている。

 

その人の連れ合いだったTさんは、仕事の上でのお付き合いで

 

亡くなるまで、奥さんであるその女性とは一度も会ったことが無かった。

 

<イチジクのスムージー>

 

今から10年前、何時もの様に、Tさんに仕事を依頼した時、

 

自分は末期癌の宣告を受け、あと数か月の命であると淡々と告げられた。

 

ホノルルマラソンにも出場し、完走した事があるとも聞き、

 

空手の有段者でもあったTさんは、

 

ガッチリ型の、丈夫そうな体つきだった。

 

勉強家で、常に何か努力している人だった。

 

 

 

ある日「こんなの作ってみたけれど、奥さん添削して下さい。」と


短歌が好きという私に、一枚の紙きれを差し出した。


 

 

それは、故郷の高校で同級生だった初恋の人の思い出を詠ったものだった。

 

お世辞の嫌いな私は、きっとTさんも、お世辞は望んでいないだろうと考え

 

お預かりして、心を込めて私なりのレベルの、

 

添削というより、拙いながら精一杯の感想をお伝えした。

 

 

後日、少しづつ痩せ始めていたTさんは、熱心にメモを取りながら

 

私の話を聞いてくれた。

 

 

 

四方山話をしながら、あと一か月でこの世から去るとは

 

まさか思ってもいない私達に、冗談とも本気ともつかない口調で

 

「ウチの女房は、ブスで我儘で、手に負えないんですよ。」と言うので

 

そこは冗談と受け取って「ハハハ、、、ご謙遜を。」と

 

笑ったものだったが。

 

夫婦喧嘩が派手だったようで、空手の有段者の旦那様に負けじと

 

奥さんも空手を習い始め、それが結構、筋が良いとも(笑)

 

「互角にやり合うんですよ!」と、呆れて言うが

 

「ホントですか??」と、口は達者だが、力のからきし無い私は

 

ただ目を丸くするばかりだった。

 

家じゅうのガラスの器を手当たり次第、ブン投げたそうだ。

 

閑静な住宅街だが、ご近所が更に静まり返ったそうな。

 

 

 

Tさんは折に触れ、その片思いの故郷の初恋のひとの面影を

 

盛んに懐かしがっていた。

 

人生の最晩年、人は一生のうちで一番心を傾けたものを

 

こうも懐かしむものなのか、と後でつくづく感じた。

 

 

 

 

Tさんは、3月末まで引き受けた仕事を必死で片づけ、

 

入院して、二週間で逝ってしまった。

 

最後の仕事は、うちが依頼した仕事も入っていた。

 

 

 

亡くなってから、奥さんが訪ねて来て、初めてお会いしたのだが、

 

Tさんの遺言で、頼る所は、ここと、ここと、、、、、と

 

4か所くらいの中の、一つに挙げてくれていた。

 

信頼してくれていたのだと、有り難く受け止めた。

 

Tさんの印象は、一言で言うと、逃げない人、であった。

 

どんな仕事も、壁にぶち当たっても、

 

何とか出来るだけの手立てと努力をし

 

最期まで、きっちり仕上げてくれた。

 

 

奥さんは、旦那様を評して、

 

頑固で融通の利かない夫だったから、仕事上のアシスタントをしながら

 

どれだけぶつかり合ったことか、と嘆いていた。

 

 

 

亡くなる二日前、病院のベッドで、自分が亡くなった後の事を

 

指図して、奥さんがノートにメモを取っていた時

 

え?と、聞き返したら、結構な力で、

 

グーで思い切り頭を殴られたそうだ。

 

「同じことを何度も聞くな!」と。

 

それが、二日後に息を引き取る人間の

 

弱弱しい力じゃないのよ!と。

 

笑う所では無いのに、思わずクスッと笑ってしまった。

 

本人たちは真剣そのものだが、

 

何処か、コミカルな夫婦像が目に浮かび、

 

偏に、彼女の元気で明るいストレートな話っぷりが

 

全然、湿っぽくないのだ。

 

 

 

出会いから、これまでの事、一通りの事を

 

一生懸命語ってくれる、純粋な人という印象を奥さんに持った。

 

正直で、面白くて、頭の回転が良くて、私は初対面で

 

すっかり、Tさんの奥さんのファンになってしまった。

 

 

 

勿論、初恋の人の事と、ブスでわがままでというのは

 

内緒にしたに決まっている。

 

 

 

 

 

しかし、昨日会って一杯お喋りして居たら、

 

なんとTさんは、亡くなる一週間前に

 

初恋の女性に会いたいから呼んで欲しい、と奥さんに頼んだそうだ。

 

そして、その人は遥々、Tさんの故郷から半日かけて

 

電車に乗って、お友達を連れて会いに来てくれたそうだ

 

その人が、とても素敵な人で、上品で頭の良さそうな

 

控えめで、口数が少なく、立ち居振る舞いは女性らしくて、、、、

 

滲み出るオーラがあるのよ。

 

「負けた!って思ったの。」

 

・・・・・・・・・・

 

 

「分かる、その気持ち。でも負けて良かったのよね。

負けて、嬉しかったでしょう?」

 

 

「そうそう、こんな素敵な人と、私も友達になりたいって

思っちゃうような人だったの。」

 

 

 

友人たちは、貴女、よくそんなことが出来たわね、って

 

賛否両論だったのよ。

 

出来るわ、っていう人と半々くらい。

 

 

 

でもね、もう焼餅なんて無いし、10代でTと出会ったときから

 

その初恋の女性が、いかに素晴らしい人か、

 

それは何度も聞かされてきたのよ。。。。

 

学年中の、憧れのマドンナだったって。

 

 

 

「もう、この世から去る直前に、願いを叶えて上げたいじゃない?」

 

「うん、うん。。。。」と、私。

 

 

 

激しい夫婦げんかの話は、どちらからも聞いた。

 

でも、思い切り喧嘩出来るなんて、信頼しているからじゃないかな。

 

私は、そう思うわ。

 

 

そうかな〜?

 

 

 

Tさんの思い出話をすると、こうだったのよ、ああだったのよ、と

 

奥さんは、いつも尽きない。

 

 

 

私は、Tさんが責任感のある仕事ぶりで、

 

他が受けないような面倒な案件でも、

 

逃げずに最後まできっちりやってくれた、、、

 

とても信頼していた旨、話すと

 

彼女は、目を輝かせて、そうでしょ?

 

Tは、そういう人間だったのよ。と。

 

 

 

「奥さんは、Tさんを心から尊敬していたんですね。」

 

 

 

その言葉に、元気な彼女は、はらはらと涙を零した。

 

 

 

そうかしら?

 

そんな風に思ったことは無かった、と。

 

 

 

 

自営業で、24時間顔を突き合わせていると、結構きついものがある。

 

だから、彼女の嘆きは良く分る。

 

 

大きなバイクで、颯爽と仕事にボランティアに、スポーツにと

 

あちこち走り回る人だけど、こんな所へは、来た事無いだろうなと

 

お連れした、眺めの良い私のお気に入りの場所。

 

市原市鶴舞のオープンガーデン(個人宅の庭)。

 

 

 

 

 

 

この長閑な景色を眺めながら

 

「私とTには、こんなゆったりした時間は無かったわ〜。」

 

 

 

天使の梯子よ!と指さす私に

 

そんな言葉も知らなかった、と言う。

 

 

 

ここの所、連れ合いを失くした友人や知り合いから

 

期せずして、同じ言葉を何度も聞いた。

 

「これからゆっくりしようと思っていたら、

 

さっと居なくなっちゃったのよ。」と。

 

「足らなかったのは、こういう時間ね。」という言葉を。

 

 

 

野焼きの煙が、里山の風景の中に何本も上がり

 

若い頃は、なんとも思わなかったその光景を

 

今は、癒されつつ眺めている。

 

 

 

 

また、来年ランチしましょう。

 

一杯、いろんな事をお話ししましょう。

 

元気で明るくて、正直な彼女に、また会おう。

 

いつも泣いたり笑ったり、賑やかで濃い時間を過ごせるから。

 

 

昨日は、ちょっと素敵な話をお聞きしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
今回も温かいお話有難うございました、つい私も昔の友を思い出しました。
その人は、私に文字の美しさが如何に大切かを教えてくれた人でした、その人人生に色々有って結婚しないままでいる様です。
私から見ますと結構な美人でしたが、その美が災いしてか、不幸な人生を歩まれたのだと思います。
テレビの番組で、あの人に会いたいと言うのが有ります、その番組に一度リクエストしようかなんて考えましたが、彼女には失礼だからと諦めました。
静かに生活されてるのにお気の毒でしょ?
私もそっと昔を偲ぶだけに致しました、そんな思い出を今日のミルフィーユさんに思い出させて頂きました。

はる爺
  • はる爺
  • 2016/10/29 8:33 AM
ミルさん
こんばんは。
ミルさんの詩人たるところを改めて感じている所です。
お話はいつもサッパリと爽やかでそれでいて切ないからです。
主人公が亡くなってからお付き合いが始まるって素敵ですね。
信頼感がなければ絶対にできないこと。
ミルさんのお人柄がよくわかる所です。
天使の梯子が現れて本当に良かったですね〜
素敵なお付き合いがずっと続きますように。
  • チカ
  • 2016/10/29 4:48 PM
☆はるさん、こんばんは〜
リコメント、遅れて済みません。風邪引きがまだ治らぬまま
色々忙しくしていたものですから、大変失礼いたしました。

独身で来た、その美しい人は文字も美しかったのですね。
何となく想像できます。
TV番組で呼びかけて会いたかった、という気持ち、封印したのですね。
何かの機会が有れば良いけれど、接点が無い場合は
今頃、どうしているのかな?という気持ちだけが募る場合もありますね。
きっと、あちらも、はるさんの事を思い出されていらっしゃるかもしれませんね。
Tさんのように、会えて旅立たれた事、幸せなことだと思います。
奥さんの広い心があったからこそ、ですね。
益々、私は彼女のファンになりました。


  • ミルフィーユ
  • 2016/10/30 6:27 PM
☆チカさん、こんばんは〜
遅れてごめんなさい。

いつも、読み取って下さり感謝です。
本当に、ご主人が亡くなってからの、奥さんとのお付き合いが始まった訳ですから、不思議なご縁です。
それも、彼女がとっても正直で、裏表のない明るく楽しい人だから
私が、彼女と話がしたいんですね。
素敵なお付き合い、ずっとして行きたいと思います。
  • ミルフィーユ
  • 2016/10/30 6:30 PM
短編集として 

Tさんとその奥さま 

このママの作品で

出版されてください〜♪

心にそっと

切なく残って・・・・・

素適なさざ波のような・・・・・






  • 山すみれ
  • 2016/10/31 7:32 PM
☆山すみれさん、こんばんは〜

この年まで生きていると、世の中、結構素敵なお話があるものですよね♪
出版できるようになるまで、身の回りの「素敵」をこのまま拾い続けるのもいいなあ、、、、、、、と、山すみれさんのコメントを戴いて、そう思いました。
有難うございました。

  • ミルフィーユ
  • 2016/10/31 9:12 PM
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